36歳で独立開業:税理士が語る、キャリアの停滞を「飛躍の準備期間」に変える思考術

キャリアの転機と、顧客ゼロからの不安
30代後半。キャリアの岐路で「独立」という選択肢を選ぶとき、その先に待つ自由と同時に、大きな不安が押し寄せます。 私自身、2か所の税理士事務所で合計10年間勤務した後、36歳で独立開業を果たしました。しかし、どれだけ経験があっても、顧客ゼロ、人脈ゼロ、売上ゼロからのスタートという現実は、想像以上に心の中を不安で支配しました。 この不安に押しつぶされることなく、一歩一歩、着実に前に進むために、私が確立したのが「心のマネジメント」と「行動計画」を連動させたルーティンです。 今回は、独立後のキャリアを支えるために実践している、私の思考術と習慣についてお話しします。
Part 1:独立の動機:「税務」の先にある成長への貢献
なぜ、安定した勤務税理士という立場を離れ、あえてリスクを負って独立したのか。
前職の事務所は比較的規模の大きな顧問先が多く、私の関わりは主に「税務部分」に限定されがちでした。もちろん専門家としてやりがいはありましたが、私の心の中には「もっと深く関わりたい」という思いが強くなっていきました。
私が求めたのは、創業期や成長を目指す中小企業経営者の方々と、税務にとどまらない経営のご相談や壁打ち相手として、共に成長していくことです。
この強い信念こそが、独立当初の「不安」を乗り越えるための、最大の原動力となりました。
Part 2:不安を乗りこなす「静と動」のルーティン
もちろん、強い信念があっても不安は消えません。特に独立当初は、その波が頻繁に訪れました。そこで私が取り入れたのが、「マインドフルネス瞑想」と「目標ノート(ジャーナリング)」の連動です。
1. 静のパート:不安をリリースする瞑想
不安な心の状態を鎮めるのに最も効果的だったのが、マインドフルネス瞑想です。
- 実践法: 楽な姿勢で座り、10分〜15分間の深呼吸を行います。
- 心のイメージング: 息を吸うときはポジティブなエネルギーを体内に取り込むイメージを。息を吐くときは、ゆっくり長く、不安やマイナスなものを体の外にすべて排出するイメージを持ちます。
- 継続の秘訣: 集中してできるときもあれば、5分ぐらいでやめてしまうこともあります。しかし、それで構いません。「完璧でなくても、今ここで心を休めた」ことに目を向ける。そのおかげで、なんとなく気持ちが落ち着き、次の行動への集中力を取り戻すことができます。
2. 動のパート:行動を生み出すジャーナリング(目標ノート)
瞑想で心が落ち着いた後、私はジャーナリング(目標ノート)に取り組みます。
ここで書くのは、単なるTo Doリストではありません。理想の姿や目標をイメージして記載することが中心です。
感情的な思考が鎮まった後、内側から自然と「次はこんな行動をしたい」という、本質的な行動目標が湧き出てきます。湧き出た目標を計画に落とし込み、小さなステップで実行に移していきます。
この「静(瞑想)→動(ジャーナリング)」のルーティンが、独立後の私の行動と精神的な安定の基盤となっています。
Part 3:【思考の法則】キャリアの停滞を「飛躍の準備期間」に変える
計画の実行と目標の達成は、程よいステップで小さな挑戦を続ける状態が理想です。
しかし、正直なところ、私自身も常に計画通りに前進しているわけではありません。時には立ち止まってしまったり、後退しているように感じたりすることもあるのが現実です。
そんな停滞感に直面したとき、最近読んだ本の一節に救われ、納得しました。
「停滞感や回り道こそが必要な時間であり、実はそれがきっかけとなり大きく前進することがある」
この言葉は、私の思考をガラリと変えてくれました。
「高く飛ぼうと思うと、一度しゃがむ必要がある」
停滞していると感じるときは、自己嫌悪に陥るのではなく、未来の飛躍のために「力を溜めている時期」だと捉えるようにしています。この思考法こそが、独立後の長期的なキャリア形成に最も必要なメンタルセットだと感じています。
Part 4:次の挑戦:受験時代の「徹底管理」を事業に活かす
この思考を具体的なアクションに繋げるため、来年から新たな挑戦を試みます。
それは、税理士受験のときに使っていた徹底的なスケジュール管理術を、日々の事業運営に復活させることです。
受験生時代は、膨大な範囲を期間内にやりきるために、緻密な計画と管理が必須でした。この集中力と計画性を、顧客対応、コンサルティング準備、マーケティングといった独立後の多岐にわたるタスク管理に持ち込むことで、どのような成果や影響があるのかを検証していきます。
結び:あなたにとっての「しゃがむ時間」とは
独立後のキャリアは、自分で全てを決められる自由がある反面、孤独や不安も隣り合わせです。
私にとって、マインドフルネスは「心を整えるしゃがむ時間」であり、ジャーナリングは「理想を描き飛躍する方向を決める時間」です。
もし、今あなたがキャリアの停滞を感じていたり、独立への不安を抱えているなら、一度立ち止まり、内面と向き合う時間を作ってみてはいかがでしょうか。


