なぜ税理士の私が、数字よりも先に「言葉」を大切にするようになったのか。

「今月の利益は◯◯万円です。計画との乖離は……」
税理士業界に入ってから、私は数百人を超える経営者の方々と向き合い、共に経営計画書を作り上げてきました。しかし、その現場で何度も、ある「虚しさ」に直面することになりました。
心血を注いで作ったはずの計画書が、いつの間にか机の引き出しの奥で眠っている。 計画を立てた瞬間がモチベーションのピークで、翌月にはもう、誰もその数字を追いかけていない。
それだけではありません。 数字だけが独り歩きした結果、「なぜ、社長の私腹を肥やすために自分たちがこんなに働かされるのか」と、従業員との間に深い溝が生まれてしまうケースも見てきました。
良かれと思って立てた数値計画が、時に組織をバラバラにしてしまう。 そのたびに、私は自分に問いかけました。
「いくら緻密な数値計画を立てても、それだけでは会社は動かないのではないか?」
正確な数字は、経営の「守り」には不可欠です。しかし、会社という船を前進させる「動力」にはなり得ません。では、何が人を動かし、成果を生み出すのか。
私が辿り着いた、人が動き、成果を出すための「3つの条件」をお話しします。
① 動くための強い目的(Why)がある
数値計画を作るとき、多くの場合は「売上1億円」といった数字が主役になります。しかし、数字そのものには人を動かす力はありません。数字はあくまで「結果」であり「記号」に過ぎないからです。
大切なのは、「なぜ、わが社には1億円という売上が必要なのか」を徹底的に言語化することです。
「地域で一番愛される企業になり、拠点を増やしたい」 「業界の常識を変えるトップランナーになりたい」 「共に歩む従業員に最大限の還元をしたい」
このように数字の背景にある「想い」が言葉になったとき、数字は初めて「目的」へと昇華されます。 社長の私腹を肥やすための数字ではなく、誰を幸せにするための数字なのか。この「北極星」を言葉にすることが、すべてのスタートです。
② 全員がワクワクするゴールを描く(Emotion)
目的が決まったら、それを「鮮明なイメージ」に落とし込んでいきます。 ここで重要なのは、経営者一人がワクワクするだけでなく、その会社に関わるすべての人(ステークホルダー)の視点に立ってみることです。
- 従業員目線で、そのゴールは誇らしいか?
- お客様目線で、そのゴールは待ち遠しいか?
- 地域目線で、その会社があって良かったと思えるか?
コーチングを通じて、あらゆる角度から「達成された姿」を眺め、全員がワクワクするゴールを確かめる。そうして初めて、計画書は「棚にしまい込まれる紙」から「みんなで実現したい未来の地図」へと変わります。
③ 「できる」と信じ抜く力(Confidence)
最後は、最も難しい「信じる力」です。 どんなに立派なビジョンも、「どうせ無理だ」と思えば足が止まります。
ここで必要になるのは、経営者が「やる」と覚悟を決め、自分と従業員の可能性を信じてポジティブな関わりを続けること。 「どうすればできるか?」と問いかけを変え、前向きな捉え方で進む勇気です。
ただ、精神論だけで信じ続けるのは限界があります。 そこで、私の税理士としての出番です。
キャッシュフローを可視化し、「この道を通ればゴールに辿り着ける」という数字の裏付けを示す。ポジティブなマインドと、ロジカルな数字の根拠。この両輪が揃うことで、「根拠のない自信」は「揺るぎない確信」へと変わります。
数字に「意志」を。
2026年が始まりました。 もし、あなたの手元に、ワクワクしない計画書や、机に眠ったままの数字があるのなら、一度お話しを聞かせてください。
数字を追うだけの経営から、理念と感情が乗った「生きた経営」へ。 あなたの心の中にある「言葉」から、新しい一年の数字を一緒に紡ぎ出していきましょう。
理念実現コンサルタント・キャッシュフローコーチ・税理士 岩城 研祐

