会計入力は申告のためだけではない|月次で経営の現在地を知る方法を神戸の税理士が解説

こんにちは。神戸市で税理士をしております岩城(いわき)です。
確定申告や決算が終わってから、出来上がった決算書を眺める。 「去年はこういう1年やったんやな」と振り返る。
多くの経営者の方が、こういう数字との付き合い方をされています。
ただ、その決算書に入っている「去年の1月」の数字を、実際に目にするのはいつでしょうか。
個人事業主の方であれば、確定申告が終わる3月ごろです。 去年の1月から数えると、14か月前の景色を見ていることになります。
14か月前の景色を見て、今日の打ち手を決めるのは、さすがに難しい。
これは記帳が遅いからでも、税理士の仕事が遅いからでもありません。 会計入力の目的が2つあるうちの、1つしか使われていないからです。
会計入力の目的は2つある
会計入力の目的を整理すると、大きく次の2つに分かれます。
1つ目は、税務申告をするため。 2つ目は、経営の正しい現在地を知るため。
1つ目だけが目的であれば、年に1回まとめて入力し、期限までに申告と納税ができればそれで足ります。これは間違ったやり方ではありません。実際、多くの事業者の方がこの形を取られています。
しかし2つ目を目的に加えると、必要な頻度がまったく変わります。
日々入力する。 そして、月に1回は今の現在地を確認する。
年1回だったものが、月1回になる。頻度にすると12倍です。
同じ「会計入力」という作業でありながら、何のためにやるのかが変わるだけで、やるべきことがここまで変わります。
年1回の入力では、経営判断に間に合わない
車のスピードメーターが、年に1回しか動かなかったらどうでしょうか。
おそらく、勘で運転することになります。 そして去年のメーターを見ながら「今もだいたいこれくらいやろう」と思い込む。
年1回の会計入力で起きているのは、これと同じことです。
- 売上が落ち始めていたのに、気づいたのは1年後だった
- 粗利率がじわじわ下がっていたのに、決算で初めて知った
- 資金が細っていたのに、通帳の残高しか見ていなかった
いずれも、気づくのが遅れただけで、早くわかっていれば打ち手のあったものです。
月に1回でも現在地がわかっていれば、手を打つ時間がありました。
なお、金融機関が決算書のどこを見ているかについては、銀行はあなたの決算書のどこを見ているのか|融資が決まる「5つの数字」でも詳しく書いています。現在地を客観的に見るときの参考になります。
月次決算とは、月に1回「現在地」を確認すること
「月次決算」と聞くと、大げさな作業を想像されるかもしれません。
やることはシンプルで、月に1回、その時点の数字を確定させて、現在地を確認するということです。
ただ、「毎日入力してください」と言われて実行できる経営者は多くありません。本業があるからです。
だからこそ、入力の手間を減らしながら数字の鮮度を上げる仕組みが必要になります。
- 銀行口座やクレジットカードを会計ソフトに連携する
- 請求書や経費のデータを自動で取り込む
- 毎月同じ取引は、登録して自動化する
こうして入力作業そのものを軽くすることで、「月に1回、現在地を見る」が現実的な習慣になります。
月次で現在地を見る具体的な手順(freee会計の場合)
実際に何をどう見ればいいのか。freee会計を使っている場合の手順をまとめます。
手順1|前月分の未処理をゼロにする
まず、口座やカードの取引で未処理のものが残っていないかを確認します。ここが残っていると、そのあとの数字がすべて途中経過になってしまいます。月初の数日で、前月分を締め切るイメージです。
手順2|損益計算書(月次)で、前月の儲けを見る
メニューの「会計帳簿」から損益計算書を開き、月次で表示します。
損益計算書は「期間の儲け」を表すものです。前月1か月でいくら売上が立ち、いくら残ったのかを見ます。
手順3|貸借対照表で、残高を確認する
同じく「会計帳簿」から貸借対照表を開きます。
貸借対照表は「一時点」の資産と負債の残高です。損益計算書が期間、貸借対照表が一時点、という違いを押さえておくと理解が早くなります。
手順4|現預金と借入の残高を見る
利益が出ていても、資金が減っていることはあります。手元にいくらあるのか、借入がいくら残っているのかは、利益とは別に必ず確認します。
手順5|前月・前年同月と比べる
単月の数字だけを見ても、良いのか悪いのかは判断できません。前の月、そして前年の同じ月と並べて初めて、変化の方向が見えます。
この5つを毎月繰り返すだけで、経営の現在地は十分に見えるようになります。所要時間も、慣れれば30分ほどです。
なお、freee会計の導入や月次の運用については、神戸市灘区でfreee会計に対応した税理士をお探しの方へもご覧ください。
AIによる記帳の自動化と、人がチェックすべき理由
いま、会計業務の効率化の中心にあるのがAIです。
仕訳の予測、証憑の読み取り、勘定科目の提案。数年前とは比べものにならないほど速く、精度も上がりました。私自身、積極的に活用しています。
ただ、ひとつだけはっきりさせておきたいことがあります。
最終的に正しく入力できているかどうかのチェックは、人がするべきです。
理由はシンプルで、AIは間違っていても責任を取ってくれないからです。
勘定科目が1つずれていた。 消費税の区分が違っていた。 そのまま出てきた数字を見て、社長が設備投資を決めた。
そのとき責任を負うのは、AIではありません。判断した経営者であり、その数字をお渡しした私たち税理士です。
速いことと、正しいことは別の問題です。
AIに任せるのは「速さ」。 人が担保するのは「正しさ」。
この線引きだけは、曖昧にしてはいけないと考えています。
現在地の次は、「目的地」を決める
正しい現在地がわかる。ここが出発点です。
ただし、現在地だけでは経営は動きません。
「今月の利益は80万円でした」
それは事実ですが、それだけでは良いのか悪いのかも判断できません。
必要なのは目的地です。
- 今期、いくら利益を残したいのか
- 借入をいつまでに、いくらまで減らしたいのか
- 何年後に、どんな会社になっていたいのか
目的地が決まって初めて、現在地の数字に意味が生まれます。 目的地のない数字は、ただの記録にすぎません。
現在地と目的地の「ギャップ」を明確にする
現在地がわかり、目的地が決まると、最後に見えてくるものがあります。
ギャップです。
目的地 − 現在地 = ギャップ。
このギャップが具体的に何なのかを、はっきりさせます。
- 足りないのは売上なのか、粗利率なのか
- 人が足りないのか、単価が低いのか
- 利益は出ているのに、なぜ資金が残らないのか
ギャップが具体的になった瞬間に、打ち手は自然と決まります。
逆に言えば、打ち手が決まらないときは、たいていギャップが曖昧なままです。
まとめ|正しい会計入力が、経営判断の出発点になる
順番は3つだけです。
- 現在地を知る — 正しい会計入力と、月に1回の確認
- 目的地を決める — いくら残したいのか、どうなりたいのか
- ギャップを明らかにする — 何が足りないのかを具体化する
そして、その最初の一つが、日々の会計入力から始まっています。
会計入力は地味な作業です。正直に言えば、面白い仕事ではありません。
それでも私が「月に1回、数字を見ましょう」とお伝えし続けているのは、数字が合っているかどうかの話ではなく、経営者ご自身が、自分で判断できる状態をつくりたいからです。
現在地がわからないまま走るのは、しんどい。 目的地がないまま走るのは、もっとしんどい。
数字は、そのしんどさを減らすための道具だと考えています。
ご相談について
現在地の見方や、目的地の決め方でつまずいている方へ。 60分の無料セッションで、一緒に整理しています。Google Meetで実施しています。
LINE:https://lin.ee/wMDvaHb お問い合わせ:https://iwakitax.com/contact/

