銀行は決算書のどこを見ているのか|融資が通る会社の「5つの数字」を神戸の税理士が解説

決算が終わり、決算書を金融機関に提出する。その場面で、「担当者はこの書類のどこを見ているのだろう」と感じたことはないでしょうか。

いま、融資の審査が厳しくなっている2つの理由

特に今は、融資を取り巻く環境が大きく動いています。コロナ禍のゼロゼロ融資は最後の返済ヤマ場を迎えており、借換保証の約8割が据置期間2年で設定されていたことから、その据置明けが2026年4月から9月に集中しています。加えて日銀の政策金利は2026年6月に1.0%へ引き上げられ、「金利のある世界」はすでに現実のものとなりました。

返済負担と金利負担が同時に重くなる中で、金融機関の審査はこれまで以上に厳格になっています。決算書の内容が、以前よりも直接的に融資の可否を左右する局面です。

決算書は何ページもありますが、金融機関が確認する数字は、実はそう多くありません。神戸市灘区で税理士をしている岩城が、顧問先の融資に同席する中で「ここは必ず見られている」と感じる5つの数字を、具体的な目安とあわせて解説します。自社の決算書をお手元に置いてお読みください。

1. 自己資本比率 ── 会社の体力を示す数字

自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産 × 100

会社の資産のうち、返済不要の自己資金がどれだけの割合を占めるかを示す指標です。ここが厚いほど、一時的に赤字が出ても事業を継続できます。

中小企業の場合、一般的には20%を超えていれば良好、10%を下回ると財務基盤が弱いと評価されます。純資産がマイナスの状態、いわゆる債務超過になると、通常の融資を受けることは相当に難しくなります。

注意したいのは、自己資本比率は1年で大きく動く数字ではないという点です。毎期の利益の積み重ねが純資産となるため、「来期の融資に向けて今から改善する」という性質のものではありません。だからこそ、借入の予定がない時期からの意識が効いてきます。

2. 債務償還年数 ── 何年で借入を返し切れるか

債務償還年数 =(有利子負債 − 現預金)÷(税引後利益 + 減価償却費)

金融機関が最も重視していると感じるのが、この債務償還年数です。

現在の利益ペースで、あと何年あれば借入を完済できるかを示します。分子の有利子負債は、借入金や社債など利息を支払って調達している負債を指します。分母の「税引後利益+減価償却費」は、1年間に会社に残るお金(簡易キャッシュフロー)を表しています。

目安は10年以内です。15年を超えると「返済能力に対して借入が重い」と判断されやすく、20年を超えると新規融資の審査は慎重になります。

ここで経営者の方に知っておいていただきたいのが、節税と融資はトレードオフの関係にあるという点です。税負担を抑えるために利益を圧縮し続けると、この計算式の分母が小さくなり、債務償還年数は長くなります。つまり、税金を減らした分だけ、借りられる金額が減っていきます。

節税をしてはいけないという話ではありません。数年以内に設備投資や事業拡大を考えているなら、どこまで利益を残し、どこから対策をするのか。その線引きを事前に決めておくことが重要です。

3. 営業利益 ── 本業で稼げているかどうか

金融機関が確認するのは、経常利益や当期純利益よりもまず営業利益です。

経常利益には補助金や助成金、雑収入といった本業以外の要素が含まれます。金融機関が知りたいのは「今年たまたま黒字になった会社」かどうかではなく、「継続して稼ぐ力があるか」です。そのため、本業の成績だけを取り出した営業利益が重視されます。

特に避けたいのが、営業利益が2期連続で赤字という状態です。単年度の赤字であれば、原因と改善策を説明することで理解を得られるケースは少なくありません。しかし2期続くと、一時的な要因ではなく構造的な問題として受け止められます。

決算を締めてから気づいたのでは、打てる手はほとんど残っていません。期中に月次で損益を把握し、着地見込みが見えた時点で対策を検討することが、結果的に融資の可否を分けます。

4. 手元資金 ÷ 平均月商 ── 何か月分の余力があるか

手元資金(現預金)÷ 平均月商 = 手元流動性(か月)

以前、決済代行会社の破産で加盟店への入金が止まった事例について書きました。売上が立っていても、入金が止まれば資金は回りません。その耐久力を示すのがこの数字です。

目安は月商の2〜3か月分、可能であれば固定費の半年分です。手元資金が薄い会社は、金融機関から見ても「不測の事態に耐えられない会社」と映ります。

また、手元資金に厚みのある会社ほど、融資交渉における立場が有利になります。資金が逼迫してから相談に行くのではなく、余裕のあるうちから金融機関との関係を築いておくことが、金額面でも条件面でも効いてきます。

5. 役員貸付金・仮払金 ── 決算書の「見えない減点」

税理士として、特にお伝えしたいのがこの5つ目です。

決算書の資産の部に、役員貸付金仮払金、あるいは長期間動いていない売掛金棚卸資産が計上されているケースがあります。帳簿上は資産ですが、金融機関はこれらを実質的な資産として評価しません。回収可能性の低い資産として、純資産から控除したうえで財務内容を判断します。

その結果、決算書上の自己資本比率が15%あっても、役員貸付金を差し引くと実質はマイナス、というケースが実際に起こります。表面上は黒字でも、金融機関の目には実質債務超過と映っている会社は決して珍しくありません。

そして、経営者ご本人がその評価を知らないまま融資を申し込み、理由がはっきりしないまま話が進まない、という場面を何度も見てきました。こうした「金融機関からの見られ方」を、平時から確認しておくことをおすすめします。

1から4の数字は、短期間では改善できません。しかしこの5つ目だけは、今日、決算書を開けば確認できます。役員貸付金が計上されているなら返済計画を立てて計画的に圧縮する、実態のない資産があれば整理する。それだけで、金融機関から見た会社の姿は変わります。

数字は、チャンスを逃さないためのパスポート

ここまで5つの数字を挙げてきましたが、目的は「金融機関に評価される決算書を作ること」ではありません。

事業がある規模を超えてくると、新規事業、M&A、大規模な設備投資といった「ここぞという勝負のタイミング」が必ず訪れます。そしてそのタイミングは、多くの場合、急にやってきます。

そのときに機動的に資金調達をして打って出られるか、それとも「いまの決算書では」と足止めを受けるか。チャンスを逃さないためのパスポートが、この5つの数字です。

当事務所は、数字は経営者の想いを裏づけるものだと考えています。5年後にどんな会社でありたいのか、何のためにこの事業を営むのか。その想いがあるからこそ、数字を整える意味が生まれます。逆に、想いだけが先行して数字が伴わなければ、勝負どころで動くことができません。理念と数字は、やはり両輪です。

融資の面談は、値踏みされる場ではなく、経営者が自社を自分の言葉で語る場です。この5つの数字を自ら把握している経営者は、質問に答えるのではなく、先に語ることができます。金融機関からの評価が変わるのは自然なことです。

まずは直近の決算書をお手元に、5つの数字を計算してみてください。30分もかからないはずです。

決算書の「5つの数字」の健康診断を承っています

岩城税理士事務所・株式会社KIパートナーズでは、神戸市灘区を拠点に、freee会計を活用した月次決算の高速化と、その最新の数字を用いたキャッシュフローコーチング・資金調達支援を行っています。

  • 自社の5つの数字が、金融機関からどう見えているのかを知りたい
  • 節税と融資のバランスを、どこで取るべきか判断がつかない
  • 次のステージへ向けた攻めの投資と、財務バランスの最適解を知りたい
  • 過去の報告だけでなく、これからの資金繰りを一緒に考えられる相手がほしい

このようなご相談をお持ちの経営者様は、お気軽にお問い合わせください。決算書を拝見しながら現在地を確認し、次の一手を一緒に整理します。

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